親知らず抜歯が怖い

質問：親知らず抜歯が怖い

親知らずが上下4本全てに生えています。少しだけ頭が出ているような状態なのですが、歯下の2本が斜めに生えてきているようで少し痛いです。早く抜歯をしたい気持ちはあるのですが、歯医者が苦手で、大学病院などの大きな病院で全身麻酔？でやってもらおうと考えてい
ます。

ただ大学病院にかかるには紹介状が必要と聞きました。紹介状をもらいたいのでいつも通っている歯医者に行く予定ですが「うちで手術しますか？」と言われてしまうか不安です。

事情を話したら検査だけしてもらうこともできるのでしょうか。何か良い方法はありませんか？

親知らず抜歯が怖い方へ

親知らずは一部だけ見えている場合、歯と歯ぐきの間に汚れ、プラーク、食片が入り込み、歯茎が腫れて痛むことがあります。智歯周囲炎という状態ですが、歯のクリーニングや、腫れどめの軟膏を入れてあげることで、症状の改善がみこめます。しかし、何度も繰り返したり、前の歯まで影響が及ぶ場合は、抜歯を行った方が良いで
しょう。

また大学病院で抜きたいというご希望であれば、かかりつけ医にて検査のみ行い、紹介状を書いてもらうことはできますので、その旨言っていただければと思います。なくても受診可能ですが、余計に費用がかかったり、待たされたりする可能性があります。

また、全身麻酔下で抜歯を行いたいとのことですが、大学病院はもちろんのこと、診療所でも全身麻酔やそれに近い静脈麻酔（胃カメラ時になどに使用する麻酔）を行えるところもありますので、かかりつけ医に相談してみるといいでしょう。ちなみに当院では、静脈麻酔を行うことができます。保険外診療となり、77,000円（税込）と抜歯費用がかかります。

以下に『病院で抜くメリットとデメリット』、『大学病院で抜くべき親知らず』をまとめましたので、参考にしてくだ
さい。

大学病院で抜歯をするメリット

1. 外科に特化した先生が豊富。
   抜歯慣れした先生も多い。
2. 麻痺などの事故が起こったときにすぐに対応ができる。
   温熱療法、神経質ブロックなど。
3. 入院して一気に親知らずを抜くことができる。
4. 入院する場合、抜歯後に血が止まらないなどの症状が出た場合、すぐに先生に診てもらえる。

大学病院で抜歯をするデメリット

1. 初診で行ったその日に抜けないことが多い。
2. アポイントが取りにくい。
3. 土日が空いてない病院が多い。
4. 研修機関でもあるので若手の先生や研修医、学生にみられることもある。

大学病院で抜歯をすべき親知らず

1. 時間に余裕がないなどの理由で、一気に全ての親知らず（上下左右4本など）を抜きたい場合。
2. 大きな嚢胞（のうほう）があり、抜歯すると顎の骨の骨折のリスクがある場合。
3. 親知らずの根が、顎の中の神経と絡まっている場合。
   （CTを撮影することで判明する）
4. 大学病院で管理しながら抜歯を行わないといけないような疾患がある。

親知らずの詳細について

上顎半埋伏

こちらは数年前の私のレントゲン写真です。右上の親知らずが斜めにはえています。お口の中には歯の頭の1部分が見えている状態です。

時々歯茎が腫れて痛かったので、抜いてもらうことにしました。親知らずが上顎洞と接していたため、抜歯後に上顎洞と口腔内が交通しましたが、2週間ほどで塞がりま
ます。

上顎萌出と下顎萌出・半埋伏

上顎はしっかり親知らずがはえています。下顎は右（青）はしっかりはえていますが、虫歯になっています。下顎の左（赤）は斜めにはえています。またこちらも虫歯になっています。

親知らずは、のどに近いですし、頬っぺたもありますので、なかなか磨くのが難しいですね。そのため、虫歯になりやすい傾向にあります。また、プラーク（歯垢）除去がしずらいため、親知らずの周りの歯茎が腫れたり、出血しやすくなります。

下顎半埋伏　7へのカリエスと根尖付近までの骨吸収

こちらは、下顎の親知らずが半埋伏で斜めにはえています。また、前の歯との間に虫歯をつくってしまっていたり、前の歯の根の先端の方まで骨が溶けてしまっています（智歯周囲炎）。

このように他の残さないといけない歯に悪影響を与えている親知らずに関してはなるべく早めに抜いたほうがよいです。

上下顎萌出

検査時のレントゲン写真です。

下顎の親知らずは右下のみはえています。まっすぐはえていますが、前の歯よりも低い位置にあるので、磨くのが難しそうです。舌側の歯茎がかぶっているのがみてとれます。

上顎の親知らずは頬の方を向いてはえています。こういうった親知らずはやはり磨くのがとても難しいです。

上顎の親知らずの抜歯のBefore/Afterです。抜歯時間は10分です。上顎の抜歯はほとんど腫れることもないです。リスクとしては一番最初の症例のように上顎洞への穿孔です。ただし、穿孔したとしても、鼻をつよくかむなどせず、安静にしていれば、しっかり回復しますので安心してください。抜歯費用は約1,700円（保険適応）
です。

下顎の親知らずの抜歯のBefore/Afterになります。歯ぐきの中に埋まっていましたが、歯ぐきを切ることなく、低侵襲に手術を終えられました。抜歯時間は10分です。下顎は斜めにはえている親知らずを抜く場合は歯ぐきを切ったり、親知らずの周りの骨を削ることが多いので、術後１週間くらい腫れることが多いです。

また、下顎は、親知らずの根の先端が顎の骨のなかにある神経と近いことが多いです。神経と根の先がくっついている場合は抜く際に注意が必要となります。抜歯費用は約7,500円（保険適応、CT撮影込）です。

上顎親知らずのCT像です。直上の黒い部分が上顎洞になります。根の先が上顎洞に一部入っているように見えます。こういう場合は上顎洞粘膜の穿孔がおこりやすいといえますが、この症例では穿孔せずにすみました。

下顎の親知らずのCT像です。根の先に黒い円があります。これが顎の骨の中にある神経になります。この症例では、近いですが、接してはいないため、神経をきずつけるリスクは少ないといえます。

下顎の抜去歯：
根の先が曲がっていたため抜く際に折れてしまいましたが、破片もしっかり取り除きました。

上顎の抜去歯：
CT通りの単根でした。

まとめ

大学病院で抜くメリット・デメリットを把握して、自分に合った抜き方を模索しましょう。よくわからない場合はかかりつけの歯医者さんがある場合は、相談にのってくれますので、気軽に尋ねてみましょう。