国内では、歯科用覆髄材料として使用する場合にのみ薬事認証されていますが、
海外では間接・直接覆髄のみではなく、生活歯髄切断、パーフォレーション部の閉鎖、根管充填、歯根端切除術の逆根管充填材料、根尖部の封鎖などさまざまな臨床用途で応用されています。
MTAセメントに関して
MTAセメントとは?
MTAとは「Mineral Trioxide Aggregate(ミネラル三酸化物)」の頭文字です。
ミネラル三酸化物である集合体に酸化ビスマスやジルコニアなどのX線造影性を有する材料が添加されています。主成分として含まれるケイ酸カルシウム系の原料が建材などに使用されるポルトランドセメントに近いため、接着剤、合着材ではないが、セメントという名称となっています。
MTAセメントは何に使われます?
MTAセメントについて
MTAセメントの特徴
- 水との練和で硬化:MTAの粉と水を混ぜることによって固まる。
- 高い封鎖性:わずかに膨張するので封鎖性が良く、リーケージを防ぐ。
- 生体親和性(硬組織形成促進効果):他の歯科用セメントよりも細胞毒性が低く、硬組織の形成を促進する。
- 抗菌性:硬化過程で強アルカリ性(pH12)を示し、抗菌性がある。
- 歯の再生:Ca2+が放出されることにより、周辺歯質でハイドロキシアパタイトを形成する。
- 歯の神経の保存:神経をできるだけ残す治療が可能であり、歯の寿命を延ばすことができる。
MTAセメントの反応式
- 2(3CaO・SiO2) + 6H2O → 3Ca0・2SiO2・3H2O + 3Ca(OH)
2ケイ酸三カルシウム+水→ ケイ酸カルシウム水和物 +水酸化カルシウム - 2(2CaO・SiO2) + 4H2O → 3Ca0・2SiO2・3H2O + Ca(OH)
2ケイ酸二カルシウム+水→ケイ酸カルシウム水和物+水酸化カルシウム
水酸化カルシウム=強アルカリによる抗菌性
MTAを使用するメリットは?
虫歯の部分が大きく、露髄(神経に達すること)してしまった場合、神経をとらずに神経を保護するために露髄部を歯科材料で封鎖していくが、MTAセメントはこの治療において使用される歯科用覆髄材料であると説明してきました。
この神経を保護することにはなんのメリットがあるのでしょうか。
これはひとえに、神経を取らずに治療することにより、歯の寿命を延ばすことができる事につきます。
歯髄(歯の神経)は、歯の内部にあり、神経や血管で構成されており、歯に加わる様々な刺激を感知して虫歯や外傷などから歯を守る機能があります。
例えば、虫歯になった時に、もしくは、虫歯後に詰め物を入れた後に、第二象牙質(デンチンブリッジ)を形成したり、虫歯菌に抵抗する免疫細胞などの防御機能があります。
逆に歯髄のない歯では、そういった防御機構がありませんし、歯自体のしなりもなくなってしまいますので、歯の破折を招いてしまいます。歯が破折してしまうと、重度の場合は抜歯になってしまいます。
ですので、歯髄を守ることで、歯の寿命を延ばすことができるのです。
似たようなもので保険適応のものはないですか?
保険適応の代替素材としては、覆髄処置では、水酸化カルシウム製剤があります。カルシウムイオンの放出によって硬組織誘導作用や強アルカリ性による殺菌作用を有し、歯内療法で多く使われています。
しかしながら、水酸化カルシウム製剤はMTAセメントと 異なり、硬化しないため、封鎖部の強度が弱く、成分も溶出しやすい。そのため、長期的には細菌感染のリスクが高いといえます。
MTAセメントと水酸化カルシウム製剤による歯髄保護の長期予後の比較では、MTAセメントの成功率は3年後まで約80%以上であるのに対して、水酸化カルシウム製剤の場合、1年後は75%程度とMTAセメントと同等であった成功率が、2年後には55%、3年後には45%程度まで低下すると報告されています。
治療上の注意点
保険適応の代替素材としては、覆髄処置では、水酸化カルシウム製剤があります。カルシウムイオンの放出によって硬組織誘導作用や強アルカリ性による殺菌作用を有し、歯内療法で多く使われています。
しかしながら、水酸化カルシウム製剤はMTAセメントと 異なり、硬化しないため、封鎖部の強度が弱く、成分も溶出しやすい。そのため、長期的には細菌感染のリスクが高いといえます。
1. MTAセメントを使用した覆髄処置が可能なのは、歯の神経が感染していないものが適応症になります。次のような症状がある場合は適応にならない可能性があります。
- 何もしなくてもズキズキ痛む
- 温かい物を摂取すると痛む
- 神経がすでに死んでいる状態
MTAセメントを使用した治療の適応は虫歯の状態を直接診査診断してから、判断していきます。
2. 歯髄を保存できない場合もあります。MTAセメントを使用した覆髄処置は、従来よりも高い確率で歯髄保存できる治療ですが、100%歯髄が保存できるというわけではありません。
歯の状態によっては、治療後に歯髄炎が起き、抜髄が必要になることもあります。
3. 治療直後は多少しみることがあります。MTAセメントを使用した覆髄治療の直後は、虫歯を除去したときの刺激や覆髄処置の刺激によって、一時的に歯が過敏になります。
冷たい物などでしみたりする場合がありますが、時間が経つにつれて軽減・消失していきます。
料金
MTA覆髄処置(マイクロスコープ使用):44,000円(税込)
MTAについての論文
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