予防歯科は、歯科先進国であるスウェーデンが国家事業として進めました。これが広まったきっかけです。今まで日本では、虫歯になったら削って埋める、歯茎が腫れたらお薬を入れるなどの対処療法が歯科治療における考え方でした。
しかし予防歯科とは、トラブルが起きる前にお口の環境を整え、未然に防ぐという考え方です。
はじめに
お口の健康を守る異なるアプローチ
最近では、予防歯科という言葉も広く使われるようになりました。
予防歯科と歯科検診は似ているようで、実は大きく異なります。
予防歯科は個別のケアやアドバイスを提供し、虫歯や歯周病の予防に重点を置き、歯科検診はお口の中にトラブルが起きていないかの問題の早期発見を目的としています。 どちらもお口の健康を守る為の歯科医療の一環ですが、目的が異なります。
虫歯の予防方法予防歯科とは
残念ながら、日本は歯科後進国と言われており、予防歯科という言葉が認知されてきたのもここ10年ほど前からです。
予防歯科ではお口の健康を維持するための専門的なクリーニングや予防的な処置、患者さまに合う個別のアドバイスを提供します。
主な目的は、虫歯や歯周病の発症を予防し、お口の環境を最適な状態に保つことです。
予防歯科では、歯科医師のチェック、歯科衛生士による歯のクリーニングやその患者さまに適した歯磨き指導やセルフケア用品のアドバイスを行います。
具体的には専用の器具を用いて歯周ポケットなどを数値化し、虫歯や歯周病などのリスクとなる細菌の付着量を調べることにより現在の問題を把握します。
その問題に対して、歯科医師や歯科衛生士によるプロフェッショナルケアとご自身でのセルフケア指導を行います。
プロフェッショナルケア
プロフェッショナルケアとは、歯科医院で行われる専門家による機械的なクリーニングPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)のことを言います。専用の機器とその方に合う研磨剤を使用して、歯みがきでは落とせない歯石や磨き残した細菌を中心に全ての歯面の清掃と研磨を行います。
プロフェッショナルケアの効果は最大で3ヵ月と言われており、虫歯や歯周病になりにくい環境をサポートします。
セルフケア
セルフケアは、患者さま自身が日常的に行う口腔ケアのことです。
歯磨きやデンタルフロス、マウスウォッシュの使用など、口腔衛生を維持するための日常的な行動が含まれます。正しい歯磨きの方法やデンタルフロスの使い方など、適切なケア方法を学んでいただきます。
お口の健康を守るためには、歯と歯の間の口腔ケアがとても大切です。口腔内全体の細菌付着率の割合は、歯の表面に付着している細菌は60%、歯と歯の間に存在している細菌は40%と言われています。
お口の中の細菌は約半分が歯間部に存在しているのに日本人のデンタルフロスの使用率はなんと20%程と言われています。使い方やなにを使えば分からないという方は、是非ともご相談ください。
口腔ケア用品も誤った使い方をしていると歯の面を傷つけてしまったり、歯ぐきを痛めてしまったりすることもあります。専門の知識を持ったスタッフが、あなたに合った正しいセルフケアを提案します。
口腔健康の維持と向上にはプロフェッショナルケアとセルフケアの両方のアプローチが必要です。定期的なプロフェッショナルケアにより、今後起こりうるリスクの早期発見や専門的なクリーニングが行われます。
一方、セルフケアは日常的に行うことで、お口の健康を長期的にサポートし、プロフェッショナルケアの効果を持続させる役割を果たします。両方を組み合わせることで、口腔健康を最適な状態に保つことができます。
また虫歯予防のために、歯を強くするフッ素塗布、シーラント(虫歯になりそうな深い溝を事前に埋める処置)も予防歯科の一環です。歯磨き指導だけでなく、その方のライフスタイルに合わせた食事指導や間食指導を行います。
それ以外にも、必要であれば禁煙指導も行います。喫煙はお口の免疫機能が低下し、歯周病菌の増殖を促進させ歯周病のリスクを増加させる要因の一つです。喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の重症度が高いことが研究で示されており、お口の健康に大きく関わっています。
喫煙はまた、血管を収縮させてしまうため、口腔内の血液循環を悪化させます。そうすると、組織を治そうとする健康な血液が細部に送られず、歯周病の回復を困難にします。
歯周病は進行すると最悪の場合、歯が抜けてしまう怖い病気です。
予防歯科における禁煙指導は、歯周病の進行を止めるための大切な一環です。ときには禁煙外来とも連携をとり患者さまの禁煙のサポートをします。
その他にも、お口の健康は全身の健康に影響します。歯周病で歯がグラグラしたり、歯が抜けたり、または入れ歯が合わないなど、食べ物をかめない状態が続くと、消化不良を起こし胃腸に影響を及ぼします。
また歯周病は、誤嚥性肺炎、糖尿病、動脈硬化や狭心症・心筋梗塞などの心疾患、認知症などの病気とも深く関係があることが報告されています。お口の中だけでなく、全身疾患のリスクも考慮した上で、個々の患者さまに合わせた予防の提案も行います。
予防歯科とは、将来のお口のリスクを最小化することでお口の健康を維持することが目的です。また、ご自身のセルフケアの確立とお口に対する知識を正しく得ることで、よりお口の健康を向上させることもできます
定期的な予防歯科の診療が推奨されており、3~4ヵ月に1度の受診が効果的です。
歯科検診とは
一方、歯科検診は、歯やお口全体の健康状態を評価することを目的としています。
お口の中を診察し、虫歯や歯周病の兆候、歯の欠損、歯のクリーニングの必要性などを確認します。
必要に応じてレントゲン撮影を行い、歯の根部や歯周組織などの目に見えない部分の状態を診ていきます。また親知らずの状態、ガンや腫瘍がないか、お口全体を調べます。歯科検診の結果をもとに必要な治療や予防歯科の計画が立てられます。
虫歯や歯周病が見つかった場合は、適切な処置が行われることになります。また検診時は、お口に関する質問や不安を直接相談できるのも歯科検診のメリットです。全ての年齢層の人々が対象ですが、すでに痛みや症状がある方や、お口にトラブルをかかえている方には、歯科検診の受診をおすすめしております。
歯科検診も定期的に受けることが推奨されます。通常は3ヵ月に1度ペースの受診がおすすめです。
予防歯科と歯科検診は似ているようですが、そのアプローチと目的は異なります。予防歯科は将来のお口の健康を重視し、歯科衛生士による個々の患者さまに合わせた口腔ケアとアドバイスを提供します。一方、歯科検診は、早期発見と治療の機会を提供することに焦点を当てています。
まとめ
予防歯科と歯科検診の違いを理解することはとても重要なことです。
予防歯科と歯科検診を受けることで、虫歯や歯周病などの口腔問題を早期に発見し、早急に対処することができます。さらに予防歯科における口腔ケアとアドバイスを受けることにより、お口の健康を維持し、将来の治療の必要性を最小限に抑えることができます。
お口の健康は全身の健康と密接に関連しており、虫歯や歯周病が放置されると、心臓病や糖尿病など他の疾患のリスクが増加する可能性があります。予防歯科と歯科検診を通じてお口の健康を維持し、全身の健康をサポートすることができます。定期的な歯科受診をお勧めします。